前回までに民事裁判で相手方に訴状を送付する説明をしました。今回は、それに関連し、民事裁判での第2回期日以降の手続きを簡単に説明します。
【準備書面の提出】
訴状、答弁書の提出により、その事件の争点が明らかとなります。
たとえば、お金を貸したので返して欲しい、という貸金返還請求訴訟の場合、被告が「お金を返す理由がない」という反論としては多くのパターンがあります。被告は「お金を受け取っていない」と反論するかもしれませんし、「お金を原告から受け取ったが、それはもらったものだ」、「お金はすでに返した」といった主張がありえます。ほかにも、「暴利行為で公序良俗に反する」、「消滅時効だ」といった主張も考えられます。
これに対し、原告が再反論をすることになります。被告の「お金は返した」という反論に対し、「被告からお金を受け取ったが、それは、別の売買契約の代金だ」といった再反論などがあります。
これらの反論は、すべて書面でなされるのが原則です。
実際の裁判では、期日間に書面を作成し、裁判の期日では、その記載内容を確認するのみとなることが一般的です。
このため、第二回目以降の裁判手続きは、テレビで見るような法廷ではなく、時間もあまり長くはならず、小部屋のような場所でなされることが多くなります。
裁判で作成される書類は独特です。現在は多数のマニュアルがありますが、やはり、一般の方がいきなり作成するのは難しいと思われます。
【事実認定と証拠・・・客観的証拠】
お互いに書面による反論を重ねることで、争点が絞られます。
争点が絞られると、その争点について、どのような証拠があるのかによって、事実認定がなされます。
証拠がなければ、何が真実かわかりません。裁判で重要なのは証拠ということになります。
そして、証拠の中で価値があるのは、客観的証拠、書面です。相手方が不利な内容を記載した書面は、最も価値のある証拠といえます。
法律相談などで、「証拠はありますか?裁判で重視されるのは書証です。」と説明をすると、「私とAさんが見ています」と言われることがあります。例えば、過失割合を争う交通事故の目撃者ということであれば、それでもいいかもしれませんが、1億円を貸した証拠が「私とAさんが見ています。現金で貸しましたが、領収証も契約書もありません。」ということでは、他に証拠がなければ、裁判所が1億円の貸金を認めることは難しいことになるでしょう。
これは、交通事故の目撃者の場合には客観的証拠が無いのが不自然ではないのに対し、1億円の貸金の場合には「普通は契約書や領収証があるはず」という経験則に反するからです。
そうすると、法律相談を受けた弁護士としては、1億円の貸金の例では、裁判所に客観的証拠の有無を聞かれることは明らかですので、「契約書などの証拠が無い場合には、裁判所の判断は厳しいものとなる可能性が極めて高いと思います」「今からでも、過去の貸金について、債務承認の一筆を書いてもらえませんか」「裁判はそれから健闘しましょう」といったアドバイスをすることになります。
【重要な証拠】
上記のとおり、訴訟の類型によって、重要な証拠は異なります。
次回は、重要な証拠について説明をし、次々回以降に証人尋問について説明をしたいと思います。
回答者 弁護士 小川 剛
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