1 和解での合意を履行しなかったら
経験上、裁判で敗訴して、1000万円を支払えという判決が出ても、支払わない(支払えない)場合は、それなりにあるように思います。この場合、回収の見込みを考慮し、強制執行をすることになります。
一方で、和解の場合には、どうでしょうか。おそらく、和解金1000万円を支払うと合意をした方は、自分で納得して和解をするわけですから、和解金を支払うつもりはあるのでしょうし、基本的には、裁判所での和解は守られる(合意どおりに履行される)ことは多いものと思われます。
では、和解で合意をしながら、合意が履行されない場合に、どの程度備えることができるのでしょうか。
2 和解調書での強制執行
和解であっても、強制執行については、判決と同様の効力を持ちます。
和解調書に、被告は原告に対し、平成27年2月28日限り、金1000万円を支払えと記載があり、かつ、その日に支払いが無かった場合には、強制執行をすることができるのです。
また、「平成27年3月31日限り、本件建物を明け渡す」とされていれば、同日を経過しても明け渡しが未了であれば、明け渡しの強制執行をすることができます。
ただ、このような強制執行は手間、時間、費用を要するのも事実です。
3 和解条項での工夫
和解は合意が整えば、判決よりも自由な条項の設定が可能なので、履行を促す工夫をすることもできます。
例えば、1000万円を請求する訴訟において、500万円で和解をすることとなった場合に、「1000万円の支払い義務があり、期限どおりに500万円を支払えば、残金を猶予する」といった和解条項とすることが考えられます。あるいは、遅延した場合の遅延損害金を上げるということも考えられます。
あるいは、原告が金100万円を支払い、被告が不動産を明け渡す、という場合には、金銭の支払いを明け渡し後にすると、被告は明け渡しをしようと考えるはずです。
そのほか、保証人や担保の追加ということも、場合によっては考えられるかもしれません。
このように、和解ならではの工夫により、和解条項が誠実に履行されるよう促すことができます。
5 まとめ
今回は和解条項ならではの履行を促す仕組みを説明しました。参考になれば幸いです。
回答者 弁護士 小川 剛
|