差押禁止財産(動産)について
差押の対象財産にはどのようなものがあるのか、どういう手法が考えられるのかを検討する前に、差押禁止財産について確認したいと思います。
今回は動産について確認します。イメージするのは債務者の自宅の動産で何を差し押さえることができるのか、という場面です。
まず、動産の差押に関して民事執行法は、剰余を生ずる見込みのない場合の差押えの禁止、売却の見込みのない差押物の差押えの取消しを禁止しています。
この売却見込みの無い動産として、古い裁判例ですが、賭博用ゲーム機はそのままでは売却できないとされた例があるそうです。
それ以外の差押禁止財産は、民事執行法131条に以下の定めがあります。
・債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
・債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
・標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
・主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
・主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
・技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
・実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
・債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
・債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
・債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
・発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
・債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
・建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
多くは差押てもどうにもならないものだと思います。この中で金銭について「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」という定めがあります。これは政令により66万円とされています。
一般的な家庭には、そのような多額の現金はないでしょうから、この差押も難しいのが現実です。
なお、営業用の店舗等であれば、売上金としてこれよりも少ない現金があったとしても差し押さえが可能となりえます。
なんだか、差し押さえられるものはかなり限られそうです。それでも、高級大型テレビや宝石類があれば、差し押さえの可能性はありますので、動産差押とはそのような物を狙ったものとご理解いただければと思います。
差押禁止とされている債権については、次回、説明をしたいと思います。
回答者 弁護士 小川 剛
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