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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年8月号》
カスタマーハラスメント対策入門29

カスハラに関する裁判例

 本日は、カスハラについて、従業員から安全配慮義務違反で会社が慰謝料を請求し、その請求が棄却された東京地裁平成30年11月2日に判決を紹介します。
 同判決は、会社の安全配慮義務違反が否定されており、会社の対応の参考になるとして紹介されることもありますが、事案はやや特殊なものとなっております。

   スーパーのアルバイトであり、カスハラにより精神的苦痛を受けたというXは、@A店に当該客に説明ができる正社員を配置すべき、A深夜にアルバイトのみとしない体制の整備、B当該客に「入店拒否措置」を講ずるべきであったと主張しました。
 裁判所は、次のように判断し、いずれもその体制に問題がなかったとしています。
 @について、ポイント付与について誤解に基づく申出や苦情を述べる客への対応について,「Y1社入社テキスト」(乙3)を配布して,苦情を申し出る客への初期対応は指導していたし,店舗マネージャー不在時には「サポートデスク」や近隣店舗のマネージャー,エリアマネージャーに連絡をすることができる態勢にあり,店員が接客においてトラブルが生じた場合の相談体制が整えられていた。このような被告会社の体制を考慮すれば,なおのこと,@の対応が必要であるとは認められない。
 Aについて、被告会社の店舗には,店舗マネージャーやエリアマネージャーの緊急連絡先や近隣店舗の連絡先が掲示されており,トラブルに対して正社員に相談して,指導を受けたり対応を求めたりする体制が整えられていた。また,各店舗のレジカウンターには,非常事態に備えて通報用の緊急ボタンが設置されており,その存在は従業員に周知されていた。そして,被告会社は,深夜の従業員を1名ではなく必ず2名以上の体制とし,一人が接客をしながら他の一人が相談及び通報等をして接客トラブルに対応することができるようにしており,原告も8月2日のトラブルの際には通報ボタン押して警備会社や警察に通報して対応し,警察官への事情説明はBが電話で説明して事なきを得ている。このような体制が整えられていることを考慮すると,それを超えて,Aの深夜時間帯に正社員を急行させる体制をとる義務があったとは認めがたい。
 Bについて、被告会社は,平成28年7月及び8月のトラブルの際は,原告の接客態度について指導する一方,当該客へ謝罪するとともに,原告への退職要求に応じることなく,関係が修復されるよう双方に働きかけたり,原告に他店で1週間勤務させる等して2か月程度トラブルを鎮静化させた後,同年10月13日にトラブルが再発した際には,入店拒否措置の可能性を伝え,その後は来店しなくなったことが認められる。  このような被告会社の対応は,原告と被告Y2との間のトラブルを終息させるために考えられる策のうち穏便なものから順次実施し,その効果を上げていたと認められる。そうすると,この間,被告会社において,入店拒否措置という厳しい措置を早期に選択すべき義務はなかったと認められる。
 としています。
 そして、原告の具体的に主張する義務@ないしBを被告会社が負っていたとは認められず,原告の主張は採用しない。また,そのほかに被告会社が,労働者の生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を欠いたと認めるに足りる証拠はない。したがって,被告会社は,クレームに関する不法行為責任を負わない。

   本件からは、安全配慮義務の特定がなされ、それについて、そのような義務があるのか、という点が検討されています。
 実際に裁判となった場合には、具体的な義務と義務違反の検討が重要になります。

   次回は、また別の裁判例を紹介したいと思います。

                                            以上

 本説明は本原稿掲載日(令和8年7月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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