弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年11月号》
民法改正A 法定利率

1 わが国の現在の民法のもとでは,利息をつけるべき場合で利率の合意をしていないときは,利率は5%とされています(利息制限法に反しない限り,5%を超える利息の合意も有効です。)。
 法定利率が5%とされたのは,民法制定当時(1898年)の市場の金利がおおむね5%程度であったからと言われています。
 しかしみなさま御存知のように,近年の市場金利は1%未満であり,5%の法定利率は実情にそぐいません。
 そこで法定利率が引き下げられることになりました。
 もっとも市場金利に近づけ,1%未満とすると変動幅が大きく影響も大きいと考えられます。
 またマイカーローンや教育ローンなど無担保貸付の金利は年3%とするものが多いようです。
 そこで改正民法における法定利率は3%とされることになりました(404条2項)。
 また将来の市場金利の変動を見越して,法定利率は3年ごとに見直しすることにもなっています(404条3項)。

2 法定利率の改定が影響を与えると考えられるのが,交通事故等の損害賠償請求事件における,「逸失利益」を算定する際の「中間利息控除」です。
 例えば,「年間600万円の収入を得ていたAさんが事故のけがで,20年分の収入を失った」と言う場合,600万(円)×20(年)=1億2000万円の逸失利益を主張出来そうです。
 しかし損害賠償実務では,お金が手元にあったら銀行に預けて利息を得ることが出来るのだから,その分の利息は引く(中間利息控除する)べきであるという考えが支配しています。
 そしてこれまでは,控除される利息は法定利率である年5%を基に算定されていました。中間利息控除の計算は煩雑になるので,年数に応じた「係数」をあらかじめ算出しておき,この年数に応じた「係数」を掛けて簡単に算出するようにしています。
 法定利率5%を基にした20年に応じた係数は12.4622となっていますので,Aさんの場合,600万円×12.4622=7477万3200円が逸失利益となるのです。 
 しかしこの控除の際の利率が社会的実情に合わない(どこの金融機関が5%も利息を高い利息を払うのだ!)と,控除率についての批判もありましたし,そもそも法律に規定のない中間利息控除についての疑問もありました。
 そこで改正法は,中間利息控除を明文化し(417条の2),控除される利息は法定利率によることとしました。
 これにより,(法定利息が年3%である間は),控除される利息分も年3%に縮減されますので,控除額が少なくなり,損害賠償額は年5%を前提とする場合よりも増えることになります。
 上記の例でいいますと,法定利率3%を基にした20年に応じた係数は14.8774となっていますので,Aさんの逸失利益は600万円×14.8774=8926万4400円となるのです。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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