不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年11月号》
不動産証券化C

1. はじめに
前回は、倒産隔離や二重課税の回避等の不動産証券化の仕組みをご紹介しましたが、今回は「レバレッジ効果」を説明します。

2.レバレッジ効果とは
不動産投資が他の投資と比較して優位なのは、レバレッジ効果を利かせやすい点にあります。
レバレッジ効果とは、テコの原理のことで、小さな投資資金で大きな投資効果を得ることを言います。具体的には、自己資本と借入金を組み合わせた資金調達を行うと全額自己資本で投資する場合より総合的な投資リターンが良くなる効果のことです。
不動産証券化の代表的な商品であるJリートの中には、取引利回り3%台で収益物件を取得して、投資家には4%の配当を行う場合が有ります。このような一見矛盾した配当を行えるのは、金融機関から低金利でローンを借り入れているためで、ファンドが持ち出しで配当を行っている訳ではありません。
なお、Jリート各社のプレスリリースを見てみると不動産価格に対する借入金の割合(LTV)は50%程度が多く、長期借入金の金利は0.5%前後のケースが散見されます。

3.レバレッジ効果のモデル例
ここでは、10億円の投資用不動産を取得する場合を例に、全額自己資本で取得するケースと借入金を組み合わせてレバレッジ効果を生じさせるケースを比較したいと思います。
【対象物件】
・不動産価格:10億円
・年間純利益:0.5億円
・投資利回り:5.0%(0.5億円÷10億円)
【借入条件】
・金利:2.0%
・LTV:80%
・年間金利支払額:1,600万円
【配当利回りの比較】
以下の計算の通り、レバレッジ効果がない場合の自己資本に対する配当利回りは、5.0%であるのに対して、不動産価格の80%相当額を金融機関から借り入れて投資を行った場合の配当利回りは、17.0%の高い利回りとなり、大きな格差が生じます。


レバレッジ効果なしの場合

レバレッジ効果ありの場合

4.ハイレバレッジのリスク
借入金割合(LTV)を高めるほど、計算上、儲けが多くなることになりますが、借入金割合が高くなるとデフォルトリスクも高くなります。
不動産を取り巻く環境は安定的ではなく、金利が上昇するリスクやテナント退去リスク等も否定できませんので、各種のリスクとバランスを取る必要が有ります。

5.最後に
次回も引き続き不動産証券化について説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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