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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年4月号》
障害年金事例B

 皆さんは「高次脳機能障害」という言葉を聞いたことがありますか?
 交通事故による後遺症でこの傷病名を聞いたことがあるかもしれません。でも、交通事故だけではなく、脳出血や頭部外傷により高次脳機能障害になる方がいます。
 最近芸能界で衝撃の引退となった小室哲哉さんの妻ケイコさんも、くも膜下出血により高次脳機能障害になられています。
 具体的な症状としては、記憶障害があります。物の置き場所を忘れる、新しい出来事を覚えられない、だから何度でも同じことを質問してしまいます。遂行機能障害というのもあり、自分で考えて行動ができなくなります。指示をしてもらわないと、行動できません。社会的行動障害もあり、他人を頼ったり、子供っぽくなったりします。感情のコントロールもできなくなり、怒りっぽくもなります。
 リハビリや訓練をしても、症状が格段に良くなることは少ないので、家族の見守りが欠かせませんし、長期間の介護となると家族も疲弊してしまうのが実情です。

 これまで出会った方の事例を紹介します。
 【53歳の男性Aさん】
 エンジニアでしたが、仕事中に突然くも膜下出血で倒れ、救急搬送。1年近くの治療やリハビリにより、身体面はほぼ回復。高次脳機能障害のみが残りました。幸い家族間の関係性がよく自宅で過ごせています。障害のエピソードとしては、「もうお腹いっぱいでしょ」と静止しないと、いつまでも食べ続けている、入院中にはリハビリが嫌でよく逃げ出していた、紙幣の種類の見分けがつかないが、目を放すとコンビニで食べきれないほどの駄菓子を買ってくる、指示をしないと夏なのにセーターを着ている等があったそうです。夏に暖房をつけて汗をびっしょりかいていたこともあったとか。この方は障害厚生年金3級を受給しています。

 【45歳の女性B子さん】
 ベテランの看護師さんとして勤務していましたが、膠原病になり、1年に2回ほど入院して集中的に治療を受けていました。その入院中に薬の影響でふらつき、転倒、生死の境を1週間ほどさまよいましたが、一命は取り留め、高次脳機能障害が残りました。
 現在は何とか周囲の援助により、障害者雇用で働いて得た給料(6万円)と障害共済年金(1級)で暮らしています。
 信号の赤と青の区別がつかない、月20日と週20時間の違いが分からない、10枚の紙の束を作るときには、3・3・3・1で10枚になるという理解をしていると言われていました。
 電話での会話がほとんどできませんが、紙に書くとおおよそ理解してくれます。ただ、急に感情が爆発したりして、お母様とのケンカが絶えませんが・・・

 【60歳の男性C男さん】
 この方も突然脳出血で倒れ、救急搬送。身体に麻痺はほとんど残りませんでしたが、全失語状態です。(こちらの会話は理解できますが、本人はほとんどしゃべることができません)高次機能障害もひどく、幼児位の知能になられています。自分で歩くこともできるのですが、1日中ベッドに横になられており、意欲が損なわれています。妻に対して、「お父さん」と言われるそうです。C男さんは、高次脳機能障害で障害基礎年金の1級を受給しています。

 リハビリ病院の記事に「私たちの脳は、高性能でデリケートな部品でできたコンピューターにたとえられます。ところが、交通事故や脳卒中で、脳にダメージを受けるとコンピューターの機能が部分的に停止してしまいます」というのがありました。まさに、停止してしまった脳の状態が、悲しいことですが、上記3人の方のエピソードです。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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