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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年12月号》
障害年金事例J

 平成30年度ブログの最終月として明るい話題ではありませんが、癌と就労についての記事をよく見かけるようになりました。働き方改革の影響もあるのでしょう。朝日新聞の現役男性記者や日本テレビ女性記者も自身の癌闘病に関する記事を発信し続けています。2人に1人は癌にり患する時代ですから、決して他人ごとではありません。今私が取り組んでいるがん患者さんの障害年金も、何とか受給させてあげたいという思いが頭から離れませんので、今月号は癌による障害年金をテーマにお話します。
 障害年金について初めて話を聞かれる方は、『障害年金は体や精神に障害がある人が受け取るもの』というイメージがあるのか、癌でも受け取れると言うと驚かれます。
 障害年金の制度はその病気による症状がもとで、日常生活や労働にかなり支障が出た場合に、最低の生活費を補うものですから、病気の種類により制限があるわけではありません。

 ただ、がんによる障害は目で見てわかりませんし、抗がん剤や放射線治療による体のダメージが強いので、次のように分けられています。
@ がんそのものによって生じる局所の障害
A がんそのものによる全身の衰弱又は機能の障害
B がんに対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害

 お医者様が書かれる診断書に一般状態区分という以下のような欄があります。

区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの。

 大まかな等級の目安を示しますと、(エ)か(オ)だと1級相当、(ウ)か(エ)だと2級相当、障害厚生年金で申請できれば(イ)か(ウ)だと3級相当です。もちろんこの一般状態区分だけで審査されるわけではなく、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療成績等を参考にして、具体的な日常生活状況により、総合的に認定するとなっています。

 現在依頼を受けているのは障害基礎年金で、1級と2級しかないため最低でも2級の受給権を得ないといけないわけです。2級は(エ)の「自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの」です。この状態であれば確実ですが、この状態とは死期が迫った状態ともいえます。障害年金の請求書を提出して、結果が出るまでに3〜4か月かかります。その間に亡くなってしまうケースもあるので、がんで障害年金を受給するということは、ある意味時間との闘いでもあるわけです。
 さて、受託している案件をどうやって受給権に結びつけるか、考えていることをいくつかあげてみます。
@ 一般状態区分の評価の訂正依頼⇒当初(イ)でしたので、根拠となる資料を付けて何とか(ウ)に訂正していただきました。
A 病状の経過⇒2年前が初診日で、入院・手術・抗がん剤・放射線治療を繰り返したのに再再発している状態であることを強調
B 具体的な日常生活状況⇒入院中はもともと障害認定基準により2級相当であり『日常生活が著しい制限を受ける状態であること』なので、頻繁に入院を余儀なくされている現在は当然に2級相当であることを強調
C 治療終了後、自宅にもどってもほぼ1週間は寝たきりで、その後起きられる時間が徐々に長くなっても、3週間もすればまた次の入院となること。家事ができると言っても、休み休みしかできず、外出は通院以外できないこと。炊事・洗濯・買い物等ほとんどの家事を家族が担っている事。

以上のようなことを細かく正確に記載した申し立て書を作成して、何とか2級の受給権獲得に持ち込みたいと考えています。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
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