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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《令和3年2月号》
社会保険審査会の裁決事例より1

 一般的に元会社員で老齢厚生年金を受け取っている夫が死亡すると、妻は遺族厚生年金を受給することができます。生活費として十分な年金額とはいえないのですが、残された妻は生活費の大半を遺族厚生年金で賄っています。その遺族厚生年金を受け取ることができないとなると、妻にとって大問題です。
 受け取り(受給権)が認められず、時々不服申し立て制度である審査請求や再審査請求を行い、国と争うケースも発生しています。
 今月号からしばらく、再審査請求で争われたケースを取り上げて、ポイント等お話しします。

【妻の不動産収入が原因で不支給となったケース】
 遺族厚生年金を受給するにはいくつかの条件がありますが、そのうちの一つが年収条件です。夫死亡日の前年の妻の年収が、850万円未満または所得で655.5万円未満となっています。
 この条件が満たせなくても、定年退職等の事情により近い将来(おおむね5年以内)に上記の年収を満たせばよいことになっています。

 これほどの年収がある女性は、ほとんどいないので問題になりません。
 ご紹介する事例は、請求人(妻)の夫が死亡しましたが、弟2人と実家の不動産業を相続していた為、年収条件が超えてしまい遺族厚生年金の権利が認められなかったのです。
 結論として、認めないとした原処分は取り消すべきだ(遺族厚生年金の受給権を認めるべきだ)との処分が決定しました。

 認められたのは以下の理由です。  ・給与収入及び給与所得について、不動産業を営む会社を弟2人と運営して給与の支払いを受けていたが、後継者が不在であるとして会社を清算する方向で事業が進められていたことがわかること。
 ・請求人である妻は、長期間にわたり死亡した夫の第3号被保険者であり、夫の加給年金(配偶者手当に相当するもので、年収条件を満たしていないと支給されない)の対象者であったこと。
 以上の点から、『夫の死亡時において、すでに給与収入及び不動産収入が近い将来において減ずる蓋然性が高く、請求人の収入額及び所得額が基準額未満になると予測できる』としています。
 こういった事から、所得が非常に高い妻は遺族厚生年金を受け取れない危険性があります。死亡後に所得を減らしたとしてもまず認められません。該当しそうな方は、事前に調べ何らかの準備を講じておいたほうがいいかもしれません。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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