今月は、これまで障害年金の申請を5〜6件行ったパーキンソン病を取り上げます。
パーキンソン病
神経伝達物質のドーパミンの生産が減少し、スムーズに体が動かせなくなる神経性疾患です。
40歳〜80歳代で発症しますが、全国の患者数は163000人。社会の高齢化により今後さらに増えると言われています。
症状:手足の震え(安静時震戦といいます)
ゆっくりとした動作になり、字が小さくなったりする(動作緩慢)
顔の表情がなくなる(仮面様顔貌)
筋肉が固まり動かせなくなる(固縮)
姿勢が前傾となり、転びやすくなる(姿勢保持障害)
便秘・排尿障害・起立性低血圧等の自律神経障害がみられます。
治療:薬物療法(レボトバ、ドパニンアゴニスト)とリハビリテーションが中心
手術:脳深部刺激療法(DBS)
【事例1】
50歳代女性 単身者で、パーキンソン発症から10年ほどは自立できていました。しかし、徐々に震えや筋固縮がひどくなり、行政の障害者サービスを利用しないと日々の暮らしが成り立たなくなりました。主治医からDBSの手術を勧められ受けましたが、さほど改善は見られませんでした。手術直後の1回目申請では、障害の程度が軽いと認められず、8か月後の2回目の申請で障害基礎年金2級が認められました。
【事例2】
55歳位で発症。本人は当初貧乏ゆすりと思っていましたが、小刻みな震えや動作緩慢・前傾姿勢等の典型的な症状が出現しました。以前のように仕事ができなくなり、職場に迷惑がかかると、早期退職。その後の生活が不安となり依頼されたもの。障害基礎年金2級が決定し、現在は66歳、障害基礎2級と老齢厚生年金を合わせて受給しています。
【事例3】
日頃取引がある顧客がパーキンソン病と知っており、肉体労働の農業ができなくなりつつあることを心配して、金融機関の職員が紹介してくれたもの。
面談中に筋固縮によりバターンと倒れ、非常に驚きましたが、本人はパーキンソン症状の影響だから心配しなくてもよいと告げられました。10分後位にはすっと何事もなかったかのように起き上がり、自宅裏の畑のほうれん草を抜きにいかれ、たくさん持ってこられました。帰りに手土産としていただきました。
障害基礎2級受給。
【事例4】
55歳位の会社員男性。数年前から症状が出てき始め、徐々に仕事に影響が出るようになりました。階段が怖くて登れないし、降りることはもっとこわくなりました。主治医から車の運転も禁止されました。鬱状態となり、仕事をこなす時間が極端に増加しました。ON(薬が効いている状態)とOFF(薬が効かない状態)の時間の感覚が短くなってきた。
頻尿や便秘となり、下半身に影響が出ている。
障害厚生年金3級受給。
【請求に当たり留意すること】
〇診断書記載時に、表した障害状態はONの時の状態なのか、OFFの時の状態なのか明確に記載していただくこと。
〇過去1年間ぐらいの日常生活の様子を具体的な絵・時間等を目で見てわかるようにアピールすること。
〇診断書作成依頼時と、年金機構へ提出するときに『毎日の生活の過ごし方』等の具体的なエピソードを記した参考資料をつけたほうが良いこと。
〇審査する職員は1件当たり20〜30分以内でチェックするため、相手の対場に立ち、わかりやすく・一目でわかるような図表等も添付するとアピールできます。
以上、だれがなっても不思議ではないパーキンソン病についてお話ししました。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
|