日本一わかりやすいビジネス法務

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年10月号》
退職(辞任)した元取締役が、会社の登記記録に未だ取締役として残っている場合の問題点(2回目)

 前回は、会社の登記記録に未だ取締役として残っている場合の問題点について、会社法第429条及び429条の法的性質について述べさせて頂きました。

 今回は判例を見ながら検討したいと思います。

 まず、相談内容を再度確認します。

【相談内容】
 私は1年半前に会社を退職しましたが、私はその会社の取締役でした。しかしながら、退職後の現在も会社の登記記録上には私が取締役として残っている状態です。先日、元同僚から、会社が取引先に対して多額の負債を抱え倒産するかもしれないとの話を聞きました。私個人には何らかの責任が生じるのでしょうか。

 では、具体的に判例を見てみます。取締役個人が第三者に対しての責任について代表的な判例は以下のとおりです。

【辞任登記未了の辞任取締役の責任】(最判昭63・1・26)
 株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、特段の事情がない限り、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を負わないものというべきであるが、右の取締役を辞任した者が、登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情がある場合には、商法14条の類推適用により、善意の第三者に対し、当該株式会社の取締役でないことをもって対抗することができない結果、同法266条ノ3第1項前段にいう取締役として所定の責任を免れることはできないと解するのが相当である。

【名目的取締役の責任】(最判昭55・3・18)
 非常勤のいわゆる社外重役として名目的に取締役に就任したものであつても、同会社の代表取締役の業務執行を全く監視せず、取締役会の招集することを求めたりすることもなく、同人の独断専行に任せている間に、同人が代金支払の見込みもないのに商品を買い入れてその代金を支払うことができないで売主に代金相当額の損害を与えた場合には、右名目的取締役は、商法266条ノ3第1項前段所定の損害賠償責任がある

 以上判例から検討するに、今回の相談者の場合には、登記記録上に取締役として記載されている以上、責任を負う可能性があるということがわかります。(実際には様々な点を考慮したうえ裁判所が判断します。)

回答者 司法書士 池田 龍太
ロウル司法書士事務所
代表司法書士  池田 龍太
〒810-0054 福岡市中央区今川1丁目10番45号 エムズビル2F
TEL 092-725-4850 FAX 092-510-7245
                     前へ<<               >>次へ
日本一わかりやすいビジネス法務に戻る