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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年5月号》
バランスシートの改善手法 〜デット・エクイティ・スワップ〜

 デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:DES)とは、ある会社に対して金銭債権を有している債権者がその債権を債務者の株式に振り替えることをいいます。中小企業が活用する事例としてよく使われるのは、役員借入金を出資し、株式を出資するパターンです。
 具体的に見ていきましょう。甲法人がその法人役員であるAさんに1,000万円借入を行っていたとします。(役員借入金)Aさんはその貸付金(甲法人側から見ると借入金)をもって、甲法人に出資をし1,000万円分の株式を得ます。すると、甲法人の財務諸表の状態が改善されていることが分かります。(下記図参照)

         DES実行前 B/S               DES実行後 B/S

DES実行前 B/S  DES実行後 B/S

※ グレーの部分が純資産

 DESを活用すれば、債務が減少して資本が増加することになるため、債務者側である会社にとっては、バランスシートが改善されるだけでなく、対外的にも金融機関などの債権者に対して改善した財務諸表を提出できるなどのメリットがあります。また、建設業や運送業など事業を行うにあたり、資産要件がある許認可が必要な場合、このDESを活用して資産要件をクリアするということも検討してもいいのではないでしょうか。
 また、中小企業においては、先代の社長との間で役員借入金が存在すると事業承継の後に、先代の社長から役員借入金の返済を突然請求されるなど、しばしば役員借入金の処理で問題になるケースもあります。このような場合は事業承継の前に、このDESを使って役員借入金を整理するといいでしょう。
 このように、会社役員(特にオーナー役員)が会社への貸付金が膨らんできた際に、よく検討されるのが役員借入金のDESです。
 メリットが非常に大きい分、税務上の取扱いなど実行する際にはさまざまな注意点があり、専門家への相談を行うことをおすすめいたします。

回答者 司法書士 池田 龍太
ロウル司法書士事務所
代表司法書士  池田 龍太
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