おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年11月号》
おもしろ知財ツアー23

 弁理士の高松宏行です。最近、アメリカと中国との間で起きている知的財産紛争に関するニュースをよく耳にします。この問題は様々な事情が複雑に絡み合っており、簡単に説明できませんが、今回は日本の企業或いは個人事業主が海外で事業展開するうえで知財面から注意すべき事項を説明します。
 例えば、家具メーカーの日本企業が海外に椅子(自社製品)を輸出・販売する計画を立てたとします。このケースで考えられる知財戦略としては、各国での特許権取得、意匠権取得、商標権取得が考えられます。
 例えば、椅子が独自の折畳み技術を有しており、これにより誰もが簡単且つ短時間で椅子を折り畳める点が特徴である場合、この技術を海外で模倣されないための手段として特許権の取得が考えられます。殆どの場合、まずは日本で先に特許出願されていますが、日本出願日から1年以内にパリ条約に基づく優先権出張という手続をとることによって、特許性の判断基準日が日本出願日になるという利益が得られます。
 また、例えば椅子が独特のデザインを有している場合、意匠権の取得が考えられます。これにより、その国において、第三者がデザインを模倣した椅子の製造・販売行為を防止することができます。
 さらに、椅子の商品名を商標登録することで、その国において、商標登録した商品名を第三者が椅子に付して販売等する行為を防止することができます。
 このように、日本で特許権等を取得すれば海外でも同様の保護を得られるというわけではなく、国ごとに出願する必要があります。
 特許および意匠権は殆どの国で新規性の具備が登録要件になりますので、既に物を販売する等して新規性が失われている場合、特許権や意匠権を取得できなくても製造・販売を継続して行える余地はあります(但し独占排他的に実施することはできません)。
 他方で商標は新規性が要件でなく、同一又は類似する登録商標がその国で存在しなければ登録される可能性があります。言い換えれば、第三者が勝手に商標登録できてしまうおそれがあります。海外で物を販売する場合、商標登録の検討は避けて通れませんのでくれぐれもご注意ください。
 海外で特許権等を取得したい場合、現地代理人を通じて行う必要があります。現地代理人は弁理士のみならず、弁護士を選択できるケースもあります。通常、海外への出願は国内弁理士を仲介して現地代理人に依頼します。
 海外で権利取得にかかる費用ですが、非常に高いです。例えばアメリカで特許を取得する場合、150万円前後は覚悟する必要があります。国内出願とは異なり、翻訳費用に加え、各国独自の手続が多く存在するのが理由の一つです。
 このように、海外で権利取得にかかる費用は高額となるため、中小企業にとってハードルが非常に高いです。このような問題を解消するため、日本では幾つかの助成金制度があります。例えば、独立行政法人ジェトロ(日本貿易振興機構)は、毎年の一定期間に助成金事業を展開しており、申請が認められれば出願時費用を半分まで助成してもらえます。
 日本のマーケットは今後も縮小する傾向にあり、そのため海外での事業展開を模索する企業等が増加しています。その際は、知財戦略を怠らないようご注意ください。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
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