おもしろ知財ツアー

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年10月号》
おもしろ知財ツアー118

 弁理士の高松宏行です。最近、メガネにカメラやマイク、AIなどを搭載した「スマートグラス」が注目されています。スマートフォンを取り出さなくても、写真を撮ったり、音楽を聴いたり、AIに質問したりすることができるメガネです。
 FacebookやInstagramを運営するMeta社がスマートグラスの開発に力を入れているのは有名な話ですが、同社は関連する特許を数多く出願しています。今回は、その中から面白い特許を2つご紹介したいと思います。
 1つ目は、声を出さずに口を動かすだけでスマートグラスを操作する技術です。
 Meta社は2026年2月、「Methods And Systems For Detecting Sub-Vocal Speech Using Wearable Devices」という名称の米国特許出願を行い、同年8月に公開しています(米国公開番号US2026/0253591A1)。
 この技術では、スマートグラスに設けられたセンサによって、言葉を発音しようとするときに生じる顔の筋肉の動きや振動などを検出し、それをもとに利用者が何を言おうとしているのかを判定します。つまり、実際に声を出さなくても、口を動かすだけで言葉を認識できるというものです。Meta社の出願では、スマートグラスを装着した利用者が、音を出さずにコマンドを口の動きだけで入力する例も説明されています。この技術が実用化されれば、声を出さずに口を動かすだけで、電話をかけたり、メッセージを送ったり、AIに指示を出したりすることができるようになるかもしれません。
 スマートフォンでは画面をタッチすることが当たり前ですが、スマートグラスでは、できるだけ手を使わずに操作できることが重要になります。音声操作はその一つですが、今度は「声すら出さなくてよい」という方向に技術が進んでいます。
 2つ目は、利用者が見ている物をスマートグラスに覚えさせる技術です。
 Meta社は、「Identifying an object for object recognition based on a user's gaze determined by a headset」という発明について特許を取得しています(米国特許第12,688,604号)。この特許は2025年5月に特許出願が公開され、2026年7月に米国で特許になりました。
 この技術では、スマートグラスが利用者の目を撮影して「どこを見ているのか」を判断するとともに、外側のカメラで周囲の景色を撮影します。そして、カメラに映っている複数の物の中から、利用者の視線が向いている物を特定します。
 さらに、利用者がその物を登録すると、スマートグラスはその物を様々な方向から撮影し、その画像を利用して、その物を再び認識できるように学習します。つまり、単に「コップ」や「バッグ」といった物の種類を認識するのではなく、利用者が見ている特定の物をスマートグラスに覚えさせることができる技術です。
 例えば、自分の家の鍵を見ながら「これを覚えて」と登録しておけば、その後、スマートグラスが同じ鍵を見たときに、「これは登録した鍵だ」と認識できるようになることが考えられます。財布やバッグ、仕事で使用する道具など、自分にとって重要な物をスマートグラスに覚えさせておく、といった使い方も考えられそうです。
 さらに将来、スマートグラスが普段見ている周囲の情報を継続的に認識できるようになれば、「鍵をどこに置いたか分からない」「さっき見た物をもう一度探したい」といったときに、AIが手助けしてくれるようになるかもしれません。もっとも、このような使い方のすべてが今回の特許に記載されているわけではなく、特許から考えられる将来の利用例です。
 このように、スマートグラスは単に「メガネにカメラを付けたもの」ではなく、人の口の動きや視線などを理解し、利用者の意思を読み取るコンピュータへと進化しつつあります。
 もちろん、特許が出願されたからといって、その技術が必ず商品化されるわけではありません。企業は将来の商品化に備えて様々な技術について特許を出願しています。しかし、公開された特許を見ていると、企業が将来どのような製品を実現しようとしているのか、その方向性を垣間見ることができます。
 数年後には、声を出さずにスマートグラスへ指示を出したり、「これを覚えて」と見つめた物をAIが記憶したりする光景が、当たり前になっているのかもしれません。

 今月は以上です。

回答者 弁理士 高松 宏行
高松特許事務所
弁理士 高松 宏行
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2-4-30 西鉄赤坂ビル7F
電話092-711-1707 FAX 092-711-0946
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