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福岡!企業!元気!のためのワンポイントQ&A 《令和8年7月号》
なぜ指示に従わず、変化を嫌い、不満ばかり言うのか
  質 問

【質問者】
販売業(正社員60 名、パート10 名)

【質問内容】
当社は、販売業を営む株式会社です。創業50 年を越え、私は三代目の社長です。私が子どもの頃から在籍する従業員も含め、お蔭様で比較的定着率が高く、採用が難しい時代において非常に助かっています。
助かってはいるのですが、業務上の指示をしても素直に従わないことも珍しくありません。また、時代の変化に合わせて新しいことにチャレンジしたいのですが、なかなか今までのやり方を変えようとしません。そして何かあれば、不満ばかりを口にします。皆さん、それぞれの仕事はそれなりにきちんとするのですが、このままでは時代に取り残され、当社の将来が不安です。
同業他社等の経営者と話をしていると、どこの経営者も同じような悩みを抱えています。ということは、指示に従わず、新しいことにチャレンジせず、不満ばかり言うことは、人間の根本的な性質・性格なのでしょうか。

  回 答

【心理学的見地から】
 性質・性格の問題かもしれませんが、心理学的見地からの説明も可能です。有名な理論について、それぞれ簡単にまとめてみたいと思います。

【なぜ新しいことにチャレンジしないのか】
▽損失回避:「プロスペクト理論」によれば、人は「利益を得る喜び」よりも「同額の損失から受ける痛み」を2 倍近く強く感じます。新しい挑戦は失敗(損失)のリスクを伴うため、本能的に回避を選びやすくなります。
▽現状維持バイアス:未知の変化よりも現在の状況を維持する方が安心であると感じる傾向です。新しいことを始めるにはエネルギーが必要であり、その「決断の回避」や「リスク回避」が相まって、現状を続ける選択を無意識に行います。
▽埋没コスト(サンクコスト):すでに投資した時間や努力を惜しみ、それを取り戻したいという思いから、非効率な旧来の方法に固執してしまう現象です。過去の投資を「損失」として確定させることを恐れ、新しい手法への切り替えを拒みます。

【なぜ不満ばかり言うのか】
 労働基準監督官による調査を、臨検といいます。@就業規則作成届け出ていないこと、A時間外休日労働協定を届け出ていないこと、B適正に残業代を支払っていないこと、を指摘されることは間違いないと考えられます。@Aはこれから届出することで是正できますが、Bについては遡って残業代を支払う必要があります。時効3 年ですから、もしかしたら想像以上に大きな額となる可能性が考えられます。
 もう一点気になるのが、店長が管理監督者にあたるかどうかです。客観的に見て 店長には経営者と一体的な立場にある労働者と言えるような実態とそれに見合った賃金が支払われていたでしょうか。いただいたご質問の文章だけでは判断できませんが、もし明らかに管理監督者に該当しないと判断される場合は、店長の分も3 年分遡って残業代を支払わなければならなくなる可能性が考えられます。
 貴社に悪気等はなかったと思います。しかし現在の状況は、労働法を無視して経営してきたことの結果です。これを機に是正して、逆にチャンスとして将来につなげていただきたいと思います。

【臨検】
 ▽自己奉仕バイアス:成功は自分の能力(内的要因)によるものと考え、失敗は運や他人のせい(外的要因)にする傾向です。これにより、仕事がうまくいかない原因を自分ではなく「会社」や「上司」に転嫁するため、不平不満が募りやすくなります。
▽行為者−観察者バイアス(基本的帰属の誤り):自分のミスは「環境のせい」にする一方で、他人のミスは「その人の性格や能力のせい」に帰属させるバイアスです。
この視点の違いにより、他者に対して不公平な評価を下し、「アイツのせいでうまくいかない」といった不満につながります。
▽確証バイアス:自分の信念(例:「この会社はダメだ」)を支持する情報ばかりを集め、反対の情報を無視する傾向です。一度不満を持つと、悪い点ばかりが目につくようになり、文句を言うための証拠を無意識に探し続けます。
▽後知恵バイアス:物事が起きた後で「最初から予測可能だった」と思い込むバイアスです。プロジェクトが失敗した際に「私はこうなると思っていた」と事後的に主張し、意思決定者を批判する材料にします。
▽気分一致効果:ネガティブな気分の時にはネガティブな情報を思い出しやすくなります。一度不満な状態に陥ると、過去の嫌な出来事まで連鎖的に思い出し、さらに文句を重ねる悪循環が生まれます。

【まとめ】
特に重視したいのが、「なぜ不満ばかり言うのか」です。不満ばかり言う者をそのままにしておくと、自発的に改善することはありません。そればかりか、どんどんエスカレートしますし、周りを巻き込みます。相手が人間なので完全な対応法はありませんが、基本は「対話」です。しかし人間の特性は、悩ましいですね。

回答者  特定社会保険労務士 安藤 政明

人事労務全般、就業規則・諸規程、監督署調査、労働紛争、社会保険、労災、給与計算、契約書
安藤社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士・行政書士・一級FP技能士/CFP 安藤 政明
特定社会保険労務士・第二種衛生管理者 箭川 亜紀子
810-0041福岡市中央区大名2-10-3-シャンボール大名C1001
TEL 092-738-0808/FAX 092-738-0888/
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