司法書士のつぶやき

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福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成25年5月号》
議決権制限に関する種類株式について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は、種類株式についてのうち、残余財産の分配に関する種類株式について説明させていただきました。
 今回は、議決権制限に関する種類株式について説明させていただきます。
 株式会社は,株主総会のすべての決議事項について議決権がない(無議決権株式)とか,一定の事項についてのみ議決権を行使することができる,あるいは,一定の事項についてのみ議決権を行使することができない,とする株式を発行することができます。この株式を議決権制限株式と言います。この議決権制限株式を発行する場合、議決権行使の条件を定めることができます。議決権行使の条件とは、例えば優先配当額が支払われなかった場合における議決権復活条項などが考えられます。この株式を発行することで、株主の相続に伴う議決権の分散を防止したり、従業員等に株式を交付する際の議決権の分散を防止することが可能となります。また、投資家から資金調達の際に経営陣の経営権を確保したり、合弁会社において議決権比率を調整するような場面でも発行するケースが見受けられます。

【「議決権行使の条件」における限界】
   敵対的買収に対する防衛策として、一定割合以上(例えば,発行済株式総数の20%以上)の株式を保有する株主(買収者)の株式だけについて、議決権の行使ができないとすることが出来ないかとされた事案がありますが、同一種類の株式につき持株割合により権利内容を異にする扱いは、一般的には認めがたいとされており、このような議決権制限株式を発行するのは難しいでしょう。

【発行済株式総数との関係】
   株式の譲渡制限に関する規定がない会社(公開会社)において、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えた場合、会社は,直ちに議決権制限株式の数を発行済株式総数の2分の1以下にするための措置を取らなければならない(会社法115)とされております。これは、少数の議決権のある株式の株主によって会社が支配されることになって適当でないとの趣旨で定められていますが、超過を生じさせた行為が当然に無効となる訳ではない点に注意が必要です。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
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