司法書士のつぶやき

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための知っておきたい会社の法律知識 《平成27年12月号》
不動産の贈与について

 みなさん、こんにちは。司法書士の安藤です。
 前回は「不動産の売買と成年後見」についてお話をさせていただきました。
 今回は、「不動産の贈与」というテーマで進めて参ります。

 贈与とは「当事者の一方が、自分の財産を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方がこれを受託することによって成立する。」と民法で定められています。つまり、法律上は口約束だけで成立してしまうのです。しかし、口約束のみでは後々になって紛争になりかねませんし、民法上も「書面によらない贈与」として、履行が終わっていない部分については取り消しの対象となっています。不動産に関しては、対抗力を備えるために贈与による所有権移転登記をすることになりますが、法務局への添付書面として贈与があったことを証する書面(登記原因証明情報)を提出することになりますので、現実的には何かしらの書面を作成することにはなります。
 不動産の贈与は、夫婦間の贈与のケースがその一例です。贈与税は非常に税率も高く、贈与をしたことで思いがけず税金がかかった等の話を聞くこともありますが、特例として、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除の110万円の他に、最高で2000万円までの控除ができるというものがあります。この特例における居住用不動産の範囲については、例えば、妻が居住用家屋を所有していて、その夫が敷地を所有しているときに、妻が夫からその敷地の贈与を受けた場合なども含まれるので、どのような場合にこの特例が使えるのか、使えないのかの判断をしっかりしておくことが、後々の不測の損害を避けるポイントとなります。

 夫名義のものを妻の名義に変更するような手続きとしては、遺言書があります。効力が生前に発生する贈与契約とは異なり、遺言は遺言者の死亡により開始しますので、時期的な違いはあります。また、遺言の場合は、そもそも発見されないために遺言者の思い通りにならないこともあり得るため、生前に贈与をして確実に名義を変更していくことでリスクを減らすことにつながるのかもしれません。しかし、コスト面では贈与税の問題をクリアしたとしても、手続き面で登記費用が大きく違いますので、総合的な判断が必要なのかもしれません。

 相続対策の一環として、生前贈与を検討されている方など、一度、しっかりと専門家の意見を聞き、しかるべき措置をとるのが賢明でしょう。

回答者  司法書士 安藤 功
会社設立・役員変更・増資・組織再編・事業承継等に関する各種登記手続き
安藤功司法書士事務所
司法書士 安藤 功
〒810-0042 福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル5階
                     前へ<<               >>次へ
>>司法書士のつぶやきリストに戻る