税金ワンポイント

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福岡!企業!元気!のための税金ワンポイント 《平成23年12月号》
有価証券の評価損−回復可能性の判断基準

 有価証券の評価損は,平成22年11月号でお伝えしましたとおり,法人税法上,原則として損金不算入です。
 しかし,特定の事実が生じた場合で,一定の要件を満たすときには,その有価証券の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額した部分の金額のうち,所定の金額を損金の額に算入することができます。
 この有価証券の評価損について,税務調査で問題になりやすいのが,『近い将来その価額の回復が見込まれない』ことの判定です。

1,資産の評価損の計上ができる事実(法令68条第1項第2号)
 法人税法第33条第2項(特定の事実が生じた場合の資産の評価損の損金算入)に規定する政令で定める事実は,物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって,当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。
 二 有価証券 次に掲げる事実
  イ 第119条の13第1号から第3号までに掲げる有価証券(第119条の2第2項第2号に掲げる株式又は出資に該当するものを除く。)の価額が著しく低下したこと。
  ロ イに規定する有価証券以外の有価証券について,その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため,その価額が著しく低下したこと。
  ハ ロに準ずる特別の事実

2,上場有価証券等の著しい価額の低下の判定(法基通9-1-7)
 法人税法施行令第68条第1項第2号イ≪上場有価証券等の評価損の計上ができる事実≫に規定する「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは,当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり,かつ,近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。
  (注)1 同号イに規定する「第119条の13第1号から第3号までに掲げる有価証券」は,法人税法第61条の3第1項第1号≪売買目的有価証券の期末評価額≫に規定する売買目的有価証券か否かは問わないことに留意する。
    2 本文の回復可能性の判断は,過去の市場価格の推移,発行法人の業況等も踏まえ,当該事業年度終了の時に行うのであるから留意する。

3,近い将来その価額の回復が見込まれないことの判定
 事業年度末において上場有価証券等の株価が帳簿価額の50%相当額を下回る場合における評価損の損金算入にあたっては,単に時価が50%程度以上下落したという事実だけではなく,その上場有価証券等の株価の回復可能性についての検証を行い,近い将来その価額の回復が見込まれないということが必要となります。
 『近い将来その価額の回復が見込まれない』ことの判断については,法人税法上,形式的な基準があるわけではなく,法人において,過去の市場価格の推移や市場環境の動向,発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては,税務上,その基準は尊重されることになります。
   この判断基準については,例えば,次のようなものがあります。
  イ 上場有価証券等の時価が過去2年間にわたり50%程度以上下落した状態にある場合や,上場有価証券等の発行法人が債務超過の状態にある場合,又は2期連続で損失を計上しており,翌期もそのように予測される場合のこれらのことを用いて合理的に判断する方法
  ロ 専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄別・業種別分析や業界動向に係る見通し,発行法人に関する企業情報などを用いて合理的に判断する方法
  ハ 監査法人による監査を受ける法人において,一定の形式基準を策定し,税効果会計等の観点から自社の監査を担当する監査法人からその合理性についてチェックを受けて,これを継続的に使用する方法(策定した基準が税務上の観点から明らかに不合理である場合や,自社の収益状況に合わせて,この基準の使用を取りやめたり,正当な理由なく変更したりするような場合は,評価損を損金算入する合理的な基準としては認められません。)
  ニ その他

4,国税庁のホームページより
 有価証券の評価損が認められる場合
 http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5574.htm

回答者 税理士 鵜池 隆充
鵜池隆充税理士事務所 税理士鵜池隆充
〒810-0073福岡市中央区舞鶴2-4-13九州DKビル6階
TEL:092-771-0361 FAX:092-771-0362
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