こんにちは。12月に、与党の平成26年度の税制改正大綱が決定されました。本来あるべき政策スケジュールに、多少、戻ってきましたので、我々としては、政治動向がこの数年よりは、見えやすくなっているのかなと感じます。
政府の税制改正大綱については、まだまだ調整が続くものと思いますので、また、機会を見て内容に触れて行きたいと思います。
今回は、事業承継のお話は一旦休憩しまして、「平成26年の税制散歩みち」として、税制の話題に触れたいと思います。
【個人所得課税】
まず、「住宅ローン控除の拡充」を取り上げたいと思います。平成26年4月からの住宅取得について、いわゆる住宅ローン控除の金額が以下のように増額されます。
<一般の住宅の場合>
・借入限度額 2,000万円 ⇒ 4,000万円
・最大控除額 200万円 ⇒ 400万円
<認定住宅(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅)の場合>
・借入限度額 3,000万円 ⇒ 5,000万円
・最大控除額 300万円 ⇒ 500万円
一見、「これはラッキー!家買おうか!」と思いがちですが、適用時期を見てわかるように、これは、消費税の増税に併せた税制措置になります。
「でも、消費税分が戻ってくるならいいよね!」とも思いがちですが、これも違います。
従来は、2,000万円の住宅ローンに対し200万円控除されていたわけですが、仮に、消費税増税への対応ということであれば、同じ2,000万円のローンに対して、控除額を300万円にするといったことでなければ、消費税の穴埋めにはなっていないように思います。
借入限度額が増えただけで、控除率は変わっていないということをよくよく考えて住宅購入を検討頂けたらと思います。
【資産課税】
つぎに、「贈与税率の改正」について触れたいと思います。これは平成27年1月1日からの適用になりますが、最高税率が上がる一方で、子や孫といった直系卑属に対する贈与税率は、一部引き下げられます。
直系卑属に対する贈与税率は、例えば、以下のようになります。
基 礎 控 除 後 の 課 税 価 格 従 来 改正後
300万円超 400万円以下 20% ⇒ 15%
400万円超 600万円以下 30% ⇒ 20%
600万円超 1,000万円以下 40% ⇒ 30%
贈与する金額によっては、最大10%も税率が低くなります。したがって、生前贈与を検討する際は、贈与時期に注意を払って、上手な渡し方ができると良いと思います。
【法人課税】
ここでは、「中小法人の交際費課税の改正」を取り上げます。これは、平成25年4月1日開始事業年度からの適用ということで、既に適用年度が始まっている会社もあります。
内容としては、資本金額1億円以下の中小法人について、損金として認められる交際費の限度額が600万円から800万円に増額されました。
また、限度額内の交際費の10%は、損金として認めないということでしが、限度額内の交際費を全額認めることになりました。所得(利益)ベースで年間最大260万円、損金(経費)を増やせることになります。
また、従来からある制度ですが、「少額交際費」という制度があります。これは、社外の者1名以上を含む1人当たり5,000以下の飲食交際費については、交際費の限度額に含めないことができるという制度です。(※少額交際費であることがわかるように交際費申請書等の工夫が必要になります。)
交際費課税の改正と少額交際費の制度を上手に活用すれば、これまで否認してきた交際費を損金処理できる余地がかなり増えることと思います。
【消費課税】
消費税が4月から上がることは、皆様、十分にご承知のことと思います。改正の内容については、話を飛ばしまして、現時点でどのようなことが検討されているかについて触れたいと思います。
多くの経営者の方が気にしていることは、駆け込み需要の動向だと思います。
ある企業では、これから3月一杯まで品薄の状況が続くことを見込んで、追加融資を受けて仕入商品を押さえています。ただヤミクモに買い漁るのではなく、まず早い段階から得意先の引き合いをとって、販売が見込める量を見極めたうえで仕入発注を決めていました。
「見誤ると売れ残る。尻込みすると欠品を起こす。とても難しい舵取りなんです。」とのお言葉でした。
逆に、品薄や人手不足で、単価が跳ね上がっている業種もあるようです。消費税が上がる前に大きな設備投資を検討していたが、建築費用が従来の1割以上も上がっているので、消費税が上がって駆け込み需要がひと段落してから再検討をするという経営者の方もいらっしゃいました。
消費税の増税前後は、工夫を凝らして、需要の荒波に対処してゆかなければなりません。
新しい年を迎えまして、「財務会計の散歩みち」も、ひとつずつレベルアップを図ってゆきたいと思っております。今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
ご意見・ご要望などありましたら、下記メールアドレスまでお寄せください。
なお、当記事は、私の私見であることをお断り申し上げます。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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