明けましておめでとうございます。2015年もどうぞ、宜しくお願いいたします。
今回は、「社内粉飾」というテーマを取り上げます。
「粉飾」というと、一般には企業が株主や債権者に対し故意に虚偽の決算開示を行うことをいいます。それは、経営者が意図を持って第三者を欺く行為だといえます。
私も、財務デューデリジェンス(財務調査)業務を通じて、様々な粉飾決算の場に立ち会います。もちろん、経営者が銀行から融資を継続してもらうために意図的に決算を操作しているケースもありますが、一概にそれだけではありません。
経理責任者や現業部門の責任者が、経営に対して虚偽の報告を行ってきたケースもあるのです。この社内粉飾が溜まりに溜まって企業の存続を危うくするような場面に遭遇しています。逆にいうと、企業としての信用に係わるような問題となるまで、経営者が気付かなかったということです。
組織風土・経営者のスタンス
社内粉飾が行われるのは、社長に対し虚偽の報告をすることに対して、経営幹部や従業員が結果的に「良し」と判断しているからだと思います。
なぜ、虚偽報告を「良し」と考えてしまうのでしょうか。いくつか、その誘因を例示してみます。
● 決算・申告、銀行交渉を経理責任者に任せきりにしている。(責任不在)
● 現業部門に対し、現実的でない利益目標を指示している。(過度の目標)
● 営業優先の社風で、経理部門は社内で発言力がない。(けん制機能の不在)
● 成果の報酬に対し、社長の叱責や社内の罰則が非常に厳しい。(厳罰の回避)
● 社内の承認手続やチェック体制がない。(不正の機会)
また、社内粉飾は、経営者一人では目が届かないくらいの規模がある企業で生じます。
一定規模以上の会社であるにも関わらず、職務分掌や職務権限が定まっていなかったり、経営者の威光が強く社内会議が形骸化していたりすることも、社内粉飾の背景にあるように思います。
具体的な事例
つぎに、具体的な社内粉飾の事例を少し紹介したいと思います。
(1)売上
<発見された不正>
架空売上を計上し放置する。または、後日返品処理又は売掛金の振替えを行う。
クレームや倒産などにより回収が不能となっている売掛金を報告しない。
売掛回収金の着服。
<経営への影響>
実態よりも良い業績報告となるため、経営判断を誤る。
回収不能の売掛金が計上されたままのため、資金繰りを見誤る。
クレーム放置や2重請求などにより、得意先の信用を失う。
<対応策>
請求書の発行、回収を経理部門で行う。
売掛金の滞留管理を月次で行う。
(2)棚卸資産
<発見された不正>
期末棚卸高を水増しし、業績を良く見せる。
不良化した在庫を正常品として評価する。
<経営への影響>
実態よりも良い業績報告となるため、経営判断を誤る。
資金化できない不良品が正常品に混ざっており、資金繰りを見誤る。
<対応策>
第三者が、棚卸表と帳簿残高を照合する。
棚卸資産の滞留管理・年齢調べを行う。
最後に
社内粉飾というのは、不正を犯す一個人の問題ではなく、組織風土、経営スタンス、社内チェック体制などの組織的な要因から生じるものだと思います。社内粉飾の兆候をつかんだ場合は、できるだけ早期の段階で、計画的に組織を傷めつけないように変革を進めてゆくべきと思います。
回答者 公認会計士 松尾 拓也
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