財務会計の散歩みち

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福岡!企業!元気!のための財務会計ワンポイント 《平成28年2月号》
財務会計の散歩道−内部牽制とモニタリング−その2

  こんにちは、健全な財務管理のためのチェック体制のお話しの続きです。  今回は、事前のチェック体制(内部牽制)と事後のチェック体制(モニタリング)のうち、後者の「モニタリング」についてお話しを進めたいと思います。

事後のチェック体制「モニタリング」
 モニタリングとは、業務の処理がそれぞれ終わった後の結果に対して、その検証手続を行うことによって、業務が適切に実施されているかを事後的に確認することを言います。 モニタリングには、所属部門長や責任者が、その部門の業務を日常的にモニタリングする「日常的モニタリング」と、経営者、取締役会、内部監査室、監査役など、所属部門以外の機関が実施する「独立的評価」があります。

「日常的モニタリング」
  日常的モニタリングには、以下のような手続が含まれます。
 ・ 部門長による業務日報の査閲
 ・ 部門長による月次部門予算・実績の分析
 ・ 管理部門長による月次全社予算・実績の分析
 ・ 管理部門長による月次の滞留債権・滞留在庫の分析
 ・ 管理部門長による決算時試算表の分析
 モニタリングでは、個々の業務処理の承認やチェックは行わず、上長が、総括的な視点で、日報や実績その他集計資料を分析し、異常点があれば、その原因を調査し、不正や誤処理がないかを確かめます。モニタリングの対象とする資料は、上記に限りません。企業の状況に応じて、日常的にモニタリングする資料を定めると良いと思います。
 日常的モニタリングでは、所属長や管理部門長など現業を熟知した人がチェックしますので、異常点を直ちに発見し、現業の状況に応じた改善対応を図ることができます。
 一方で、現業に携わっている方によるチェックになりますので、自己保身的なチェックになりやすく、当該上長が不正や誤処理の当事者であったりする場合は、エラーが検出できない可能性もあります。

独立的評価
 上記に対して、「独立的評価」では、現業部門に属さない機関がモニタリングを行います。
 例えば、社長や取締役会が、部門長から業績報告を受け、適正な業務が実施されているかを監視・監督することが挙げられます。
 また、代表的な制度として、「内部監査」が挙げられます。内部監査は、社長直轄の内部
 監査部門又は内部監査担当者が、社内の稟議決裁手続、業務処理の承認やチェックの手続、業務の効率性や予算の達成状況などを監査し、企業の内部統制が有効に整備・運用されているかどうかについて、社長に報告する手続です。
 それから、監査役(会)設置会社では、監査役は、企業が法令・定款に抵触せず、適正な財務報告が実施されていることを監査し、取締役等に監査報告を行います。監査役は、内部監査と異なり、社長の直轄機関ではありません。その権限と責任は、法律や定款で定められており、取締役の不正などについて責任を追及する場合にその会社を代表することもあり得ます。
 また、上場企業や大会社などについては、公認会計士による監査が必要となります。公認会計士による監査では、第三者専門家である公認会計士が、一般に公正妥当と認められる監査基準に従って、会社の財務諸表が適正かどうかを監査します。
 独立的評価では、現業部門から独立した機関がチェックをしますので、より客観的な評価が期待されます。一方で、日常業務とは別に、評価を行いますので、人員体制や実施コストの点で、企業には負担がかかります。
 企業の規模や業務の複雑性、あるいは、企業が要求される業務適正化の程度によって、どこまで独立的評価の制度を設計するかがポイントになろうかと思います。

改善措置
 事後のチェック体制であるモニタリングは、不正や誤処理を「発見」するための手続です。当然な話ですが、エラーを発見するだけでなく、それをどう改善させるのかが重要になります。そのためには、発見事項と改善措置(指摘事項)を文書化し、対象部門に渡すと同時に、改善報告を必ず受け取るようにすることが肝要です。
 企業が健全化していく過程を記録に残し、経営者や現場の従業員にとっても、励みになるような制度設計ができると一番よいのではないでしょうか。

回答者 公認会計士 松尾 拓也
まつお会計事務所
公認会計士 松尾 拓也
福岡県福岡市博多区綱場町6-15 川野ビル1F
TEL092-272-0710 FAX092-272-0711
HP: http://smaken.jp/user/usc_to.cgi?up_c1=43440
e-mail:info@matsuo-kaikei.com
※当記事は、著者の私見であることをお断り申し上げます。
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